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朱き蜘蛛
溶けてしまわぬうちに掬い取ってくださります?
匙で表面を滑るような鮮やかな手つき
焦らすその触り方 顔をそっと撫ぜるだけで
そよ風が吹き付ける時と似たくすぐったさ
空はたちまち曇り 後に雨を降らすの
まるで貴方の気分 猫のように気まぐれ
朱い蜘蛛に糸を作らせ
その上歩く足取り美し
纏わりつく汚名を食す
私を清らかにしてくれます
間に合わなかったのですか 仕方ありません、では済まず
私は溶けてしまい地を流れてゆくだけ
朝日が昇ってゆく 私はそれを見上げていた
青い青い海の底 ゆらゆら揺れ漂う
緑の森に吸われ 私は樹になりました
いずれ付ける綺麗な花を摘んでください
朱い蜘蛛に意図を求めて
腕を伸ばし届かず彷徨う
貴方はただ悲しげな目で
助けもせずに見つめているだけ
楽にしてくれますか
何時になれば死ぬるのですか
私は 水 樹 花 汚名
貴方と共にいてはいけない
逃げるようにこの世を去ろう
銀の刃突き立てよう
朱い蜘蛛の糸が絡まり
指も何も動かせなくなる
それは貴方が命じたの
思い留まるしかなくなった
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