top of page
アネモネ
夏だと言うのに雪が
人知れず ふわり 僕に積もるよ
罪はその白さを増して
地面を埋め尽くした
木々を掻き分け見つけた古城
何を求めて此処へ来たのか
温い緊張が身体を包む
それが貴女との出会いでした
風が感情をさらったのか
駆け出し手を握った
限りなく黒に近い空
金色に光るのは貴女の髪か
美しい夜に捧ぐウタ
さよなら 日常よ
開かぬ口は無音のままに
「此処から出して」と確かに叫ぶ
腕を引っ張り出口へ向かう
木々が蠢いて邪魔をした
貴女を閉じ込めるのなら
僕の心で生き続けて
鋭い刃が胸を刺した
拭いきれぬそれは罪の証か
美しく華やかに咲いた
貴女を花束に
叫びながら森を走った
胸に花束を抱いて
僕は逃げ出す
貴女に向かう木々を払い
鳴きだす城を背に駆けていく
美しい夜に捧ぐウタ
さよなら さよなら 生きた貴女よ
灯りも何もない森の中
降り続く雪が僕を導く
罪はその白さを増して
天へと誘った
bottom of page