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Earphone
街灯が照らす夜 白い息は何もない宙を染めた
寒そうに身を縮めるあなたと帰りのバスを待っていた
二人じゃ続かない会話にしびれ切らして
切ない曲だけ選んで 片耳で聴いていた
あなたの声は無数のトゲだ 僕の胸刺して潜り込んだ
忘れた頃にまた痛みだす 追い出そうにも深すぎるから
気にしないように 気にしないように 目を塞ぎやり過ごしてみたが
一度見つけた傷口からは青い色の血が流れ出た
水筒の紅茶はまだ湯気を絶えず昇らせ視界を奪う
身体の火照りはこれのせいだと言い聞かせど違うのだろう
自作のプレイリストはもうじき一周する頃だ
最後の曲がサビに入ったところでバスが来た
息や湯気が空を覆い尽くし雲を作っているのだとしたら
晴れた日やざんざん降りの日は何を汲み取っているのかな
凍り付きそうな僕の心を空が飲み込んだのか知らないが
頭の上に雪が舞い降りて 瞬きも待たずに溶けていく
空いた方のイヤフォンを奪い去ってあなたは言う
「この曲私も好き」その最後の二文字だけ耳に残る
あなたの声は無数のトゲだ 僕の胸刺して潜り込んだ
ドクドクと脈打つ心臓が全身に毒を回していく
こんな痛みが続くというなら 恋など知らなくて良かったのに
一度見つけた傷口からは青い色の血が流れ出た
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