top of page
水槽
海月の浮いた水槽が憂鬱を掻き立てる
月とは程遠いそれの名の意味は分からない
何かしら想い込めた指輪を沈めてみた
まるで興味なさげに浮き沈みを繰り返した
一日中口を開かないで
君に届けと手紙をしたためる
会いたいなんて今更遅すぎる願い事
今なら某歌手みたいに散弾で死ねるのかな
地下鉄は今日もすごい人で埋め尽くされる
その中で思い悩む僕だけ浮いているようで
イヤホンから漏れる音に耳を傾けていたんだ
どこかで聞いたような言葉が並べられただけの歌
気づけば見知らぬ廃ビルの真ん前
錆び付いたドアをゆっくり開け放つ
埃被った一面に真新しい足跡
もしかしたら君がここに来ていたのだろうか
こじつけにしても随分無理のある夢見事
疲れすぎているのかな 気づけば目を閉ざしていた
夢ならきっと鮮やかな空の下で踊るのでしょう
幻想で汚れてしまった記憶をなぞる
水槽で漂うだけ それだけで幸せなら
愛なんて要らないから海の月と化したいな
結局君などいない埃っぽいビルの中
涙を流し続けて水槽を作り出した
bottom of page