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そよ風

放課後の教室 白い陽だまり

うつぶせている小さな背中

君と僕 それ以外の無機物

時計の音と二人の息がうるさいな

 

ただほんの少し話しがしたいだけなのに

なぜこんな重苦しく陽は沈んでいくの

 

細く開いた窓からそよ風が吹き抜ける

臆病な僕を嘲笑うように

単にカーテンを揺らすだけのそれが憎くて

乱暴に扉を閉めて追い出した

 

どうしたの、と驚いて目を覚ます君

慌てて真顔を取り繕うけど

何となく不思議そうに見つめられて

胸の内がドクドクと脈打っていた

 

密かに君が想いを寄せている人がいると

そんな噂を聞いて手首に傷増える

 

さして君に話すような話題が思いつかず

無音に心臓が押し潰される

まるで全て見透かすようなその目が怖くて

せめて傷だけは右手で隠した

 

飛んでいった綿毛が恋を咲かすのなら

そよ風なんて言わずに台風でも来りゃいいな

君の元で無数に 僕の元で無数に

咲き乱れて 繋がって そして一つの花になって

 

突然立ち上がった君に腕を掴まれて

隠した傷を指がなぞった

理由など知らぬはずの君は

何を思ってそんなに泣いているの

どうしていいか分からず

咄嗟にその身を抱きしめていた

教室に嗚咽と時計の音が鳴り響いていた

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