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産声
いつになく雨風が窓を打つ 何かの前触れのように
見たことないほど苦痛に歪むあなたの横顔見守った
僕の手とあなたの手
不安と期待を込め 握り締める
君が精一杯産声を上げた途端に溢れる涙
いま感情の波が押し寄せて 優しさだけ残して去っていく
満足げに雨風が弱まり 穏やかな時が流れ
まだ痛いはずのあなたは笑う ああそうか 母親になったんだね
触れれば崩れそうだと
恐る恐る抱き寄せた 小さな身体
この想い表す言葉など 辞書で探し尽くせど無いのだろう
ありきたりな言葉でいいのなら「生きてきて良かった」と切に思う
気が付けば雨雲は遠のいて 深夜の風がそよいだ
泣き疲れたのか眠りについた君の額をそっと撫ぜる
季節が樹々枯らせていく中で新たな命の種が芽吹いた
色を失う景色見渡せば 笑顔咲かせて回る君がいる
近付けた僕の人差し指 君は力強く握ってきた
ああ 産まれたばかりの君だけど必死に生きようとしているんだね
僕らも必死に君を守るよ
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