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巣箱
僕以外誰もいない涼しい部屋だ
仲の良かった君たちは元気ですか
一人 故郷を出て過ごすうちに
なんとなく大人になったような気がしていた
髪型も服装もほら落ち着いたものを選んだ
格好つけて描いていた絵も今じゃ恥ずかしくて見れない
またいつか会おうねって 抱き合ってどれくらい
連絡さえも取り合わず いまどんな顔していますか
いつも笑顔だった僕は感情を出すこともなく
君たちに会うのが怖いくらい変わってしまったよ
仕事する間は楽しいけれど
疲れて帰るそこは虚しい巣箱
まるで餌でも貪るような食事
望んだ大人の姿はこんなんじゃない
休日はどこも行かずに借りてきた映画を眺め
大して内容も入らずいつの間にかうたた寝している
お互い頑張ろうねって 差し出したその手は
流れに任せそれとなく頑張っているふりをしていた
遊ぶことが好きだったのに何もかも億劫に感じ
ひんやりとしたフローリングで明日を見つめるばかり
またいつか会おうねって 泣き合ってどれくらい
荷物をまとめる最中 手に止まった厚いアルバム
開けば思い出の片隅にいたようなクラスメイトでさえ
愛しい人のようで リビングに嗚咽が響く
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