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ガラス#4 雨蝶

 

少しだけ ほんの少しだけ君に近づけたよ そんな気がしただけ…
白い部屋 清潔な天井が見える 目を閉じれば 抱きしめられた感触

 

どれだけ君を想ってみても 虚しく割れてゆくだけで

 

もう 離れたくない 出て行かないで
気づけば君の腕をしっかり掴んでいた
痛そうに歪む 君の表情 咄嗟に手を放すと
蝶のようにヒラリヒラリ 窓から飛んでいくように

 

一人だけ ただ後悔して泣いた 近づけたと勘違いしていたんだ
籠の中 空っぽになってしまった 捕まえたと本気で思っていた

 

どんなモノでも捧げますから どうか神様 結んでください

 

この広い世界の中で君に
出会えたことさえも奇跡というのか
君が出て行く後ろ姿が 僕の心を今
ズタズタに切り裂く 鋭いガラスのように

 

また雨か
そういえば君を想い始めてからは
ずっと降っていた気が…
いつになく今日は強く降る
どうせならば全て流してくれ

 

どれだけ君に届けたくても 僕の手からは受け取らない
ずっと 永久(とわ)に 受け取ってくれないの

 

もう 伝えたほうがいい 出て行かないで
気づけば勝手に唇が動いていた
「好きなんだ」と言う 僕の言葉に
一番 驚いたのは僕だった…

最後の賭けに 応えておくれ

勇気(コイン)は全て使い果たしてしまった

窓の外ではポツリポツリと

雨が止み始める音が聞こえている

 

お好きなように…

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