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鏡ノ中ノ夢
ねぇ聞いて 何故に無視するの
鏡見て向こう側に言う
彼はただ哀しげな瞳で
暗い世を嘆くように小さく
ポツリと口を動かす
青い空さえ淀んで見える
雲ひとつないのに ないのに
夢の中では英雄気取り
目を覚ましたくない
薬でもやってるように気持ち良いから
手放せない 早く次の夢を
ほら見てよ 彼の口許を
やっと返事 もらえたんだ
僕の顔と鏡とを交互に
君の目は憐れみの色を帯びた
ポツリと涙すら浮かべ
ツルリとした感触が常に
絡みつく 指に 肌に
さよなら 僕よ
僕の心よ
目を覚ますと潰えてしまう
眠気と友は安心するから
ベッドの横に大きな姿見
光る表面をなぞれば
いつもと同じ君がいる
変わらぬ顔 虚ろな瞳
変わらぬ窓 曇り空
遅かれ早かれ僕は死ぬから
目を覚ます必要はないね
さよなら 君よ
鏡の友よ
もう会うことはないでしょう
本当は知ってる 君は僕だろ?
鏡の前で納得していた
蒸し暑い部屋 窓を開ければ
冷たい風 やっと現実に
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