top of page
アルトリウス
渦を巻いた陰鬱と哀しみの間に
僕だけ一人ぼっち残して君は去った
別れなどとうに慣れたもんだと思った
特別などあろうはずもないと
美しく出来た円形に入り込めず足踏みした
それを数日繰り返し また円形へと帆を張った
新しい円に辿り着き 錨降ろそうとした矢先
厳つい憲兵に捕まり 聞けば通行証がいるのだとか
そこへ割って入ったのは王様のような
誰からも慕われる君だった
差し出された腕も見ずに振り払った
永らく触れていなかった優しさで傷
透き通った瞳をした君には分からぬだろう
陽の眩しさに目がやられる僕を
崩れた円形の中央 痣もない少年が泣いた
お家柄を嘲笑う醜い民衆が群れを成す
僕は見えない場所で奴らを睨んだ
視界の隅 丸腰の王が動く
黄金色に輝く剣を振るうように
言葉巧み 群れ 薙ぎ払う君の背を
呆然と眺める僕は情けないな
変わりたいと嘆くのはさぞ容易だろう
歩み寄った卑怯者に
君は何故 笑顔を向けるの
見返りすら望みの薄い
僕を陰で笑うんだろ
振り絞った勇気を無下に放り投げ
君の横 廊下 階段を駆け抜けた
ただ一言「友達にして」が言えない
そりゃそうだろう とうに雲の上の人
一段ごと玉座から離れて行く
僕の背をどういう訳か追う君の目が
憐れみすら無く ただただ美しくて
嗚呼 貴方に一生お仕え致しましょう
bottom of page