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移桜
何時の日か埋めた種が割れ 黒い桜が咲きました
悲しげに俯く花弁を 僕にどうすることが…
毎日欠かさずに 水をやる姿はまるで執事
ティーカップに紅茶注ぐように 静か ただ待つ桜
道の端で佇む小鳥 忍び寄る根 絡め取られてく
いっそ殺そうと火を持ち寄る すると叱られた子供のように
涙 花弁散らす
息絶えたことも知らず 未だこの世に姿を残し
それでも それでも 力強く 根を伸ばし 美しい花を付けてる
日が昇ると共に眠る 金色の光を受けて
僕も眠ろうと寄り添う度 頬を紅く染め上げ
離れるといつもの姿 宵闇をも包む漆黒
もしもこの命尽きた時は彼女のようになろう
泣いた時も 笑った時も その隣りで過ごしてきたけど
君はそれをどう思っただろう 僕が泣くと藍 笑うときっと…
変わり行く君の服
息絶えたと思わせず いつか消えると思いたくない
けれども けれども 月日は流れ 永遠を共になどできはしない
何時の日か春が去り行く 黒い桜が死にました
なのに何処か嬉しそうな顔 桜色に染め上げ
泣くことはやめ 笑みを浮かべ 桜は桜色を保ち
子供ように純粋だから 僕の色を知らない
花弁が肩に落ち消ゆ
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